お尻の病気
病気は、どんな病気でも辛く、けっして笑えるようなものではない。
それは当然なことなのに、どうも「お尻」に関しては違うような気がする。
正月が明け、数件の仕事をこなしたあと、お尻がパンパンに腫れて、座ることも歩くこともままならず、数日間横向きのままうんうんと寝込んでいた。
原因はお尻にある脂肪の塊で、こいつが何かの拍子に炎症を起こすらしい。
毎年1度はこのようなことが起きるのだ。
「実は体調が悪くて」
「どうされました?」
「お尻がパンパンに腫れて動けないんです」
こんな会話をしても、絶対に深刻には受け止めてもらえない。
笑われはしないかもしれないが、何となく間が抜けている。
間が抜けているのは診察の時も一緒だ。
診察台にうつ伏せになり、お尻を出す。
それは仕方ない。患部を見てもらわないといけないから。
「前回撮ったCTですけど、放射線担当が言うには、膿が溜まっているんじゃないかとのことです。この部分ですね…」
僕はうつ伏せでお尻を出したまま、首をひねってそれを聞いている。
いやいや、「洋服を戻してこちらへお座りください」くらい言わんかい!
CT撮っておいて膿が溜まっているって、そりゃそうだろよ!
心の中では罵倒しているが、客観的に見て間が抜けているのは間違いない。
病院の待合時間で読んだ、さくらももこのエッセイ「もものかんづめ」の第1話も痔の話だった。
お尻の病気はどんなに辛くても、笑いのネタになってしまうのだ。
今心配していることがある。
今週、宅地建物取引士の法定講習を受けなければならない。
朝から夕方までみっちり講習がつまっている。
これは延期できない。
何しろ、殿様商売なのだ。
申込方法ひとつ見てもそのことは明確だ。
いまどき、講習の申し込みがインターネットでできない。
それどころか電話でも郵送でもできない。
わざわざ都内の窓口まで出向いて申し込むのだ。
その際、講習を受けないと免許の更新ができないと念をおされている。
パイプ椅子に長時間座ることに備えて、座布団を買った。
整体師が開発したという、低反発の座布団だ。
少しかさばるが当日はこれを持って行こう。
ただし、ひとつ問題点がある。
この座布団は真ん中に穴が空いている。
わざわざこの座布団を持っていく僕を周りの人間は痔だと思うに違いない。
目があった瞬間、僕は痔じゃないんですよ!そう言ってやろうか。
それとも、サッと挙手をして、みなさん僕は痔ではなく、お尻の炎症のためにこれを使っているんですよ、と小さな演説をしてやろうか。
くだらないことを考えているのである。